スタートアップに興味がある学生の中には、「離職率」が気になっている方も多いのではないでしょうか。
「スタートアップの離職率って本当に高いの?」
「スタートアップの主な離職理由は?」
「スタートアップで働くことの特徴は?」
革新的なビジネスモデルや最先端の事業を展開しているスタートアップが気になるものの、いざ就職するとなると、実際の働き方や離職率などが気になりますよね。
そこでこの記事では、
- スタートアップとはどのような企業のことか
- スタートアップとベンチャーの違い
- スタートアップで働くデメリット
- スタートアップで働くメリット
- スタートアップの離職率と課題
- スタートアップの離職理由
について解説します。
筆者も新卒でスタートアップに入社した1人です。実際に経験談も踏まえて、新卒でスタートアップに入社するメリット・デメリットを解説していきます。
スタートアップへの就職に興味がある方はぜひ最後まで読んでみてください。
1スタートアップとは?
一般的にスタートアップとは、新しいサービスや商品を提供し、短期間で急成長している企業のことを指します。
スタートアップというと、起業して間もないと考えられることが多いですが、起業期間はスタートアップの定義としてはありません。
日本で有名なスタートアップには、GoogleやFacebook、Uber、スマートニュースなどがあります。どの企業も、今までになかった革新的なサービスを提供し、急成長をしました。
小規模で始めたスタートアップでも、成長力次第では大企業に成長することもあります。
2スタートアップとベンチャーの違い
スタートアップとベンチャーは混同されがちですが、同じものではありません。
スタートアップは、今までにない、革新的なアイデアから新しいビジネスを展開しています。一方で、ベンチャーは既存のアイデアを基に、変化を加え、小規模で柔軟なビジネス展開をしています。
新規事業に取り組むスタートアップの方がリスクはありますが、スピード感を持って企業の成長に力を注ぎます。
また、スタートアップとベンチャーでは資金調達の方法が違います。ベンチャーは中長期的に成長し続けることが目標であるため、金融機関から融資を受けるなどして資金を得ています。
これに対し、スタートアップでは創業者本人や創業者の身の回りの人が出資しているため、わずかな資金で運営を開始している場合が多いです。
なぜなら、スタートアップの出資者は急成長したスタートアップの株式を売却し、会社を手放すことで利益を獲得することを目的としているからです。
会社を手放す出口戦略には企業買収や株式公開などいくつかの方法があります。会社の成長具合やサービスの注目度によってどの方法を取るかは左右されます。
中長期的な安定より、急成長する会社で社会の課題解決に貢献したい、これまでにないビジネスモデルで社会に革新を起こしたいと考える人はベンチャーよりスタートアップへの就職がお勧めです。
3スタートアップで働くメリット
スタートアップはこれまでになかった価値やものを社会に生み出し、今後急成長する可能性があるので、夢がありますよね。
スタートアップ就職を希望する理由に「事業内容が魅力的」「ワクワク仕事に取り組めそう」というものがあると思いますが、実際に働く上でのメリットは何でしょうか。
次の2つが主なメリットです。
それぞれ詳しく説明します。
成長の機会がある
スタートアップでは大企業とは違う成長の機会があります。
人手が十分にあり、分業化が進んでいる大企業とは違い、スタートアップでは一人の社員に任せられる業務は広範囲です。
一つずつ丁寧に教えてくれる先輩社員が必ずいるとも限らず、自分で考え行動を起こすことが求められます。分からないことは自分で調べたり、必要な雑務も自分で行わなければならないので、自発性も身に付くでしょう。
また、スタートアップでは入社したてでも経営陣と近くで仕事を行うため、企画の段階から業務に携わり、企画力や推進力、スケジュール管理力などが問われます。
大企業ではやり方や進め方が細かく決められているようなことでも、スタートアップでは新しいアイデアを求め、新入社員にも意見を聞く文化であることが多いです。そのため、積極的に自分の意見を述べる発信力や提案力も自然と身につくことでしょう。
社会人として、どんな業界でどんな仕事をするのにも役に立つスキルがスタートアップでは身に付きます。また社会人としてだけでなく、将来的に起業したり個人事業主でやっていく時に必要な考え方や能力も吸収できるでしょう。
### キャリアアップが見込める
スタートアップでは、**大手企業に比べ、早くキャリアアップできる可能性が高いです。**
少数精鋭であるため競争率が低いとも言えますが、年齢や経歴に関係なく評価されるので、頑張れば頑張った分だけ評価されます。
大手に比べて、経営陣とより近い距離で働くため、経営陣の考え方に直接触れられる機会もあり、ゆくゆくは経営陣の1人として働ける可能性も高いと言えます。また、同業界の経営陣と知り合えたり、一緒に仕事をしたりすることでビジネス上でのネットワークが広がることもメリットでしょう。
スタートアップでの学びを基に起業を志す方も多く、子会社や独立企業の社長も目指せます。実際に私が働いていたスタートアップでも、今は独立したり、すでに自分で会社を持ちながら会社員として働かれている先輩も在籍していました。
実力主義のスタートアップだからこそ、自分の頑張りが評価され、キャリアアップを見込めます。
関連記事:[新卒スタートアップの平均年収は⁉年収事情&企業の探し方を解説!](https://cheercareer.jp/ip_blogs/article/1119)
4スタートアップで働くデメリット
スタートアップは、若いうちから成長してキャリアアップしたい、将来は独立したいという学生には適切な環境かもしれません。
ただ、働く上でのデメリットも存在します。
スタートアップで働くデメリットは主に下記の2点があります。
* 業務の負担が大きい
* 福利厚生が充実していない
早期退職に繋がらないように、事前にスタートアップでの働き方について理解しておきましょう。
### 業務の負担が大きい
スタートアップでは
一人ひとりに任される業務の負担が大きいです。
企業の成長を求め、スピード感を持って事業を展開するスタートアップでは、資金や人手が間に合っていない場合が多いです。人手が少ないことで単純に一人ひとりがしなければならない仕事量が増え、残業が嵩むという時間的な負担があります。
また、少数精鋭な組織構成であるからこそ、一人が担当する業務の範囲が広く、責任もあるため、精神的な負担もあるでしょう。
しかしながら、
どの会社でもそれぞれの忙しさはあります。
例えば、大手では業務は分業化されているものの、一人ひとりの業務量が少ないというわけではありません。
スタートアップの企業研究をする際には、社員の一日の仕事の流れなどを調べ、どのようなスピード感や時間軸で働いているのかを知っておくと良いでしょう。
### 福利厚生が充実していない
スタートアップ企業では福利厚生が充実していないことも多いです。
設立して間もなく、従業員満足度よりも事業の拡大を最優先するため、従業員の健康管理や給与は後回しになってしまいます。
額面での給与は大手よりも高い可能性はありますが、その分従業員として得られる特権がほとんど無い場合もあるでしょう。
大手企業などは、定年退職時の退職金や怪我や病気で働けなくなった時の保険なども福利厚生として持っていることもあり、長期的に働くことをイメージしやすいです。
スタートアップの場合は、長期雇用の視点を持っていない場合もあるので、事前に昇給や退職金のことなどを調べておくことがお勧めです。
また新卒で入社する際は、引っ越しを伴う場合もあるので、その土地での生活に最低限必要なレベルの収入を得られるのかなど、あらかじめシミュレーションしておくと良いでしょう。
関連記事:[スタートアップとは?ベンチャーとの違いや就職するメリット・デメリットを解説!](https://cheercareer.jp/ip_blogs/article/1070)
5スタートアップの離職率と課題
スタートアップ就職のメリット・デメリットを見てきましたが、スタートアップの離職率は本当に高いのでしょうか。
結論から言うと、**スタートアップだけに注目した離職率の統計は無いので、離職率が高いとは言い切れません。**
離職率を調べるとき、主に参照されるのは事業所規模毎に調査された離職率です。特に、新卒の離職率を比較することが多いです。
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」を参照すると小規模企業のほうが大手よりも離職率が高いことが分かります。
下の表は、事業所の規模別で、高卒と大卒の就職後3年以内離職率を示したものです。
|事業所規模|高卒|大卒|
|-|-|-|
|5人未満|61.9%|56.3%|
|5-29人|52.8%|49.4%|
|30-99人|44.1%|39.1%|
|100-499人|30.0%|28.9%|
|500-999人|25.6%|24.7%|
|1,000人以上|25.6%|24.7%|
出展:[厚生労働省 「新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率」](https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00004.html)
表からも分かるように、**事業者規模が小さいほど、離職率が高いと言えます。**一般的にスタートアップ規模の「5~29人」では、大卒で3年以内の離職率が約50%という結果になっています。
事業の成長を1番に考えるスタートアップは、福利厚生の不十分さや、業務過多による社員の負担、不安定な経営などといった課題があるからでしょう。
ただ、スタートアップの離職率が高いと言われる理由の1つに、
そもそもスタートアップは少数の社員で構成されているということと、若手社員の割合が高いということが挙げられます。
離職率が高いことは課題視されることが多いですが、スタートアップ企業だけに絞った正確なデータもないなか、離職率だけで企業を評価することはできません。
気をつけなければならないことは、離職率は数値的データでしかないということです。
離職率が低い方が良い会社と思えますが、離職率が低くてもパワハラやセクハラがあるなら良い会社ではありません。
コロナ禍をへて、日本では様々な働き方が認められるようになりました。終身雇用が当たり前ではなくなった現代では、離職率だけで企業の良し悪しは判断すべきではないでしょう。
6スタートアップの離職理由
スタートアップを離職する主な理由は何でしょうか。スタートアップだからといって、何か特殊な離職理由がある訳ではありません。
ここでは、よくある3つの離職理由を紹介します。
* 期待値と現実のギャップ
* 人間関係の悩み
* 次のステップに進みたい
### 期待値と現実のギャップ
**期待値と現実のギャップがあるということは、スタートアップに限らず、どの企業にも存在する離職理由です。**
実際に入ってみると労働時間が思っていたより長いことや、様々な休暇制度も利用しづらい環境であることもあります。
一人当たりが抱える業務内容が想像していたよりも多く、給与に見合わないと感じることもあるでしょう。
入社前のイメージと入社後の現実とのギャップを極力抑えるためには、入社前に先輩社員の声を聞くなど、しっかりと企業研究をすることが大切です。
大手企業の場合は、仕事内容や働き方に関しても情報が出回っていることが多いのできちんと事前に調べておけばある程度のギャップは防げるかもしれません。
しかし、スタートアップの場合、公開されている情報が少ないケースがほとんどです。
そもそもネット上の情報が限られているスタートアップに就職する場合は、積極的に採用担当者や先輩社員にアプローチすると良いでしょう。
実際に筆者も、入社前に1週間出社してインターンをすることで、入社後のギャップを埋めることができました。オンライン上ではわかりにくいことも多いので、可能であればぜひ出社して、生の情報を集めてから判断しましょう。
### 人間関係の悩み
人間関係の悩みも代表的な理由の一つです。
人間関係の悩みが離職につながるのはスタートアップだけではありませんが、事業所の規模も小さいスタートアップでは特に顕著になって見える要因です。
毎日限られた人たちとのコミュニケーションの中で意見の食い違いや、対立が発生した時、蟠りが解消できず、会社に居づらいと感じることもあるでしょう。
日頃から良好な人間関係を築いておく努力も必要ですが、対立が生まれてしまったときに、蟠りを解消する人間力が無ければ早期離職につながる可能性があります。
職場の人間関係も外から見るとわかりにくい問題なので、実際に出社したりインターンしてみたりすることで、社風が自分に合うかなどを確認しておきましょう。
### 次のステップに進みたい
スタートアップへの就職自体を次のステップに進むためのマイルストーンと考えている人もいます。
「将来は起業したい」、「大手で高収入を得るために経験値としてのバネがほしい」と考えている人はスタートアップに入っても数年で退職してしまうことが多いです。
また、若い時にしか冒険はできないと考えている人も多いでしょう。将来の安定よりも、スタートアップのような躍動感のある会社で働いてみたいという願いを持ってスタートアップに就職していると考えられます。
つまり、定年退職までの長期目線で入社する人ばかりではないということです。スタートアップを離職する人の中には元々の予定として、前向きな気持ちで辞めていく人がいることも事実です。
7まとめ
スタートアップの離職率は高いと言われています。
しかし、**公になっている離職率の数値だけでは会社の良し悪しを判断できないため、それぞれの企業の企業研究をすることをお勧めします。**
この記事では、
- 既存のアイデアからビジネス展開するベンチャーに対し、スタートアップは革新的なアイデアを元にビジネス展開をすること
- スタートアップで働くのであれば、まずメリットデメリットを把握したうえで企業を選ぶこと
- スタートアップは小規模であることや若手社員の割合が高いことによって離職率が高くなっている、そして確かな離職率の数値は検出されていないということ
を解説しました。
スタートアップへの就職を検討されている方の参考になれば嬉しいです。