文系は就職先がない⁉ 就職しやすい企業や学部別の就活事情を紹介
文系学部の学生から「文系は理系と比べて就職が難しいって本当?」 「文系だと就職先を選べない?」といった、就職活動に対する不安の声がよく聞かれます。
文系学生の不安を煽るようなWeb記事も見受けられますが、実際の文系学生の就職事情はどうなのでしょうか。
本記事では、
- 文系学生の就職は本当に難しいのか
- 文系学生が就職しやすい企業
- 文系学生の就職活動を成功させるために大切なこと
- 文系学部別 就職活動時のPRポイント
について、詳しく解説します。
ぜひ、本記事を最後まで読み、自信を持って就職活動をスタートさせてくださいね。
文系は就職が難しい?
結論から言うと、文系学生の就職は難しくありません。
それは、厚生労働省が発表している「大学等卒業者の就職状況調査」のデータに表れています。
令和4年3月の大学卒業者における文理別の就職率は、文系95.4%、理系97.4%と、大きな差はありません。また、令和3年以前の就職率も同様に推移しています。
理系と文系どちらでも、ほぼ等しく就職できていることが上記データから分かりますね。
また、企業は新卒の学生に即戦力を求めて採用しているわけではありません。
企業が新卒の学生に求めるのは、コミュニケーション能力や社会人としての礼儀作法といった、自社の社員として成長するためのベースの能力です。
企業によって重要視する能力は異なりますが、基本的に学生個人のポテンシャルや経験を評価することが多い傾向にあります。
自社に必要なスキルや経験は、入社後に身につける機会を企業側が設けている場合が多く、学生の段階で、社員として必要なスキルを全て備える必要はありません。
企業は「文系学部出身」であることを理由に、文系学生を敬遠するわけではないので、安心して就職活動にのぞみましょう。
文系が就職しやすいのはどの企業?
文系学生が就職しやすい企業について、業界別に紹介します。
上章では、文系学生の就職は難しくないというお話をしましたが、文系学生が就職しやすい業界があることは確かです。平均年収や就職偏差値についても紹介しているので、就職活動の際に参考にしてくださいね。
ここで言う「就職しやすい」とは、文系学生のこれまでの学びや経験などを仕事に活かして活躍しやすい、という意味です。
文系学生が就職しやすい業界は、次の通り。
- メーカー
- 金融
- 商社
- インフラ
【メーカー】文系が就職しやすい企業
「製造業」とも称されるメーカーは、文理問わず人気の高い業界です。
日本の産業を支え、市場規模が大きい自動車メーカーや食品メーカー、製薬メーカーなど、ジャンルは多岐にわたります。
最新の技術やニーズが生み出され続けるメーカー業界だからこそ得られる、日本の産業ひいては経済をけん引するやりがいを求めて就職を志望する学生は多いです。
文系学生は、企業の今後の展開を左右する企画・マーケティングや広報など、企業のブレインとして活躍することが可能です。
以下、実際に文系学生が多く活躍するメーカー企業を紹介します。
企業名 | ジャンル | 平均年収 | 就職難易度 |
---|---|---|---|
日本製鉄株式会社 | 鉄鋼メーカー | 536万円 | 非常に高い |
住友電気工業株式会社 | 非鉄金属メーカー | 785万円 | 非常に高い |
旭化成株式会社 | 化学メーカー | 751万円 | 高い |
株式会社資生堂 | 化粧品メーカー | 659万円 | 高い |
東京エレクトロン株式会社 | 半導体メーカー | 1,285万円 | 低い |
オムロン株式会社 | 電気機器メーカー | 850万円 | 非常に高い |
サントリーホールディングス株式会社 | 食品メーカー | 1185万円 | 非常に高い |
日本精工株式会社 | ベアリングメーカー | 712万円 | 高い |
株式会社デンソー | 自動車部品メーカー | 721万円 | 非常に高い |
京セラ株式会社 | 電子部品メーカー | 725万円 | やや高い |
【金融】文系が就職しやすい企業
金融は、お金にまつわる仕事であることから収入が安定しているとされ、文系学生からの人気が非常に高い業界です。
金融業界は「銀行」のイメージが強いですが、保険会社や証券会社、クレジット会社など、金融商品を取り扱う企業も含まれます。
金融商品販売員やファイナンシャルプランナー、アナリストなど、経済・経営学、法学といった文系学生の学びを活かしやすい仕事が多い点も、金融業界の特徴です。
以下、実際に文系学生が活躍する金融業界の企業を紹介します。
企業名 | ジャンル | 平均年収 | 就職難易度 |
---|---|---|---|
三菱UFJ銀行 | 都市銀行 | 774万円 | 高い |
ゴールドマン・サックス | 外資系投資銀行 | 1,947万円 | 非常に高い |
株式会社日本政策投資銀行 | 政府系金融機関 | 796万円 | 非常に高い |
三菱UFJ信託銀行株式会社 | 信託銀行 | 880万円 | 高い |
野村証券株式会社 | 証券会社 | 1,440万円 | やや高い |
大和証券株式会社 | 証券会社 | 1,220万円 | やや高い |
損害保険ジャパン株式会社 | 損害保険会社 | 626万円 | やや高い |
三井住友海上火災保険株式会社 | 損害保険会社 | 738万円 | 高い |
日本生命相互株式会社 | 生命保険会社 | 484万円 | 普通 |
野村アセットマネジメント株式会社 | 投資顧問会社 | 1,042万円 | 非常に高い |
【商社】文系が就職しやすい企業
商社は、高収入である点や「やりがいを持って働きたい」「持ち前の英語力を活かしたい」といった学生の就活の軸や意気込みと仕事内容がマッチしている点から、文理を問わず人気を集めている業界です。
商社には「総合商社」と「専門商社」があります。総合商社は幅広い分野の商品を、専門商社は特定分野の商品を取り扱う商社です。どちらの商社も、国内外を問わず、メーカーが製造した商品を売買することを主な業務としています。
商社は、専門性の高いスキルよりも個人のポテンシャルを重視して新卒採用する傾向があることから、学部によらず本人の努力次第で内定を目指せる業界と言えるでしょう。
以下、文系出身者が活躍する商社を紹介します。
企業名 | ジャンル | 平均年収 | 就職難易度 |
---|---|---|---|
伊藤忠商事株式会社 | 総合商社 | 1,627万円 | 非常に高い |
三菱商事株式会社 | 総合商社 | 1,678万円 | 非常に高い |
三井物産株式会社 | 総合商社 | 1,549万円 | 非常に高い |
丸紅株式会社 | 総合商社 | 1,192万円 | 非常に高い |
双日株式会社 | 総合商社 | 1,038万円 | 非常に高い |
JFE商事株式会社 | 鉄鋼専門商社 | 966万円 | 高い |
第一実業株式会社 | 産業機械専門商社 | 889万円 | やや高い |
日鉄物産株式会社 | 鉄鋼専門商社 | 813万円 | 高い |
ユアサ商事株式会社 | 産業機械専門商社 | 739万円 | やや高い |
【インフラ】文系が就職しやすい企業
インフラは、社会の基盤を整備・保持することを主業務とし、その社会的役割の大きさから、仕事にやりがいや使命感、収入の安定を求める学生からの人気が非常に高い業界です。
インフラ企業には、鉄道やバス、航空といった交通分野、電力やガス、石油といったエネルギー分野、電話やインターネット、水道といった生活分野、公共施設管理など建設インフラと呼ばれる空間分野があります。
本業界は、理系学生が有利となる専門知識が必要となる職種もありますが、品質管理や営業など、文系出身者が活躍する職種も多数あるため、文理を問わない業界と言えるでしょう。
以下、文系学生が活躍するインフラ企業を紹介します。
企業名 | ジャンル | 平均年収 | 就職難易度 |
---|---|---|---|
東京電力ホールディングス株式会社 | 電力 | 816万円 | 高い |
関西電力株式会社 | 電力会社 | 821万円 | 非常に高い |
東京ガス株式会社 | ガス会社 | 695万円 | 高い |
東日本旅客鉄道株式会社 | 鉄道会社 | 674万円 | 高い |
阪急阪神ホールディングス株式会社 | 鉄道会社 | 819万円 | 高い |
東京地下鉄株式会社 | 鉄道(地下鉄)会社 | 720万円 | やや高い |
東日本高速道路株式会社 | 高速道路管理会社 | 793万円 | やや低い |
阪神高速道路株式会社 | 高速道路管理会社 | 818万円 | 高い |
ソフトバンク株式会社 | 電気通信会社 | 808万円 | やや高い |
株式会社NTTドコモ | 無線通信会社 | 870万円 | やや高い |
文系の就職活動を成功させるために大切な3つのこと
文系学生が就職活動を成功させるために意識すべきことは、以下の3つです。
- 自己分析・企業研究は徹底的に
- 自分のビジョンに合ったスキルや経験を伸ばす
- 自己PRは企業のビジョンとの共感性を大切に
文系学生と理系学生の就職活動におけるいちばんの違いは、企業へのアピールポイントにあります。
大学での学びが仕事に直結する理系学部に対し、文系学部は仕事と学問が直結しにくいため、企業への自己PRにひと工夫を加える必要があるからです。
企業に必要な人材であると思われるために、以下の3つのことを意識しましょう。
自己分析・企業研究は徹底的に
自己分析と企業研究は、インターンシップやエントリーなどの実動前に行う非常に重要なプロセスと言えます。
自己分析は、能力や将来のビジョンなど自分自身を正しく知ることであり、企業研究は、企業の外見に惑わされず、ビジョンや成長性など企業の本質を明らかにすることです。後悔しない企業選びをするために必要な材料集めの段階だと考えてください。
自己分析と企業研究は、後に意識すべきこと「自分のビジョンに合ったスキルや経験を伸ばす」「企業のビジョンとの共感性を大切にした自己PR」に直結するため、手を抜かず徹底的に行いましょう。
関連記事:自己分析とは~なぜ就活で自己分析が必要なのか?やり方や注意点も解説~
関連記事:「業界研究」の効果的なやり方とは?抑えておきたいポイントも徹底解説!
自分のビジョンに合ったスキルや経験を伸ばす
自己分析と企業研究が終わったら、自分が将来ありたい姿(ビジョン)にあわせて現段階で得られるスキルや経験を積むことを意識して過ごしましょう。
企業が新卒の学生に求めるのは、社会人としてのベースの能力だと前述しましたが、学生の段階で手に入れたり伸ばせる能力やスキル、経験はたくさんあります。
例えば、
- 英語力向上のためTOEICのスコアを伸ばす
- 学生インターンシップに積極的に参加して実務経験を積む
- 外部団体やアルバイトなど大学以外のコミュニティでの経験を通して情報収集するなど
これらの行動は、就職活動時ないし入社時に、積極的にアピールできる要素となります。
また、これらの行動は決して就職活動ありきではなく、今後の生活を豊かにする意味で非常に大切なので、大学生活をベースにプラスαのスキル、経験を積むことを意識しましょう。
自己PRは企業のビジョンとの共感性を大切に
自己PRは、企業のビジョンに自身がどのように共感をしたのか、ビジョン達成のために自分はどのように貢献できるのかをアピールすることを心がけましょう。
文系学生は学問が直接的に仕事内容に繋がることが少ないため、個人の経験やポテンシャルをアピールする機会が圧倒的に多くなります。それに加え、企業のビジョンとの共感性について具体的に言及できれば、厚みのあるアピール内容となるのです。
企業のビジョンを正確に把握することと、企業へ貢献するために活かせるスキルの鍛錬が鍛錬が、効果的な自己PRに繋がります。
関連記事:自己PRとは?~企業が見ているポイントや作成のコツも紹介~
【文系学部別】就職活動時のPRポイント
ここでは、企業に対し効果的に自身をアピールできる文系学部別PRポイントを紹介します。
学部の分類は、以下の通りです。
- 法学部
- 経済・商・経営学部
- 外国語学部
- 文学部
法学部のPRポイント
法学部生の大きな強みは「論理的に考える力」を持っていることと言えます。
なぜなら、法学を通して、難解な法律を読み解き、適切に理解して議論を行う力が養われているからです。
「論理的に考える力」は、ES上でのPRポイントになるほか、就職活動中や社会人になってからも求められる能力であるため、企業や社会全体からの評価も高まるでしょう。
法律家や公務員、民間就職でも法務に携わる仕事であれば、法律の専門知識自体を活かすことができます。
経済・商・経営学部のPRポイント
経済・商・経営学部生の強みは、企業や業界、ビジネスモデルの理解に長けている点と言えるでしょう。
経済やビジネス、流通の仕組みを学んでおり、文系学部ながら数学的思考も身につけているため、企画やマーケティング、経営、経理などさまざまな職種で活躍することができます。
また、就職に直結する資格取得をしやすい点も経済・商・経営学部生のメリットです。
経済・商・経営学部生が取得しやすい資格例は、
- 税理士
- 公認会計士
- ファイナンシャルプランナー
- 証券アナリスト
- 簿記
などがあります。
外国語学部のPRポイント
外国語学部生のPRポイントは、語学力と留学経験にあると言えるでしょう。
まず、英語をはじめとして海外言語の語学力そのものが武器となります。
グローバルに事業を展開する企業が増えている昨今、外国語に長けた人材を求める傾向も強まっているためです。
また、留学による異文化交流を通じて経験したこと、学んだことも強みになります。
文化が違えば価値観や考え方も違うため、日本の「当たり前」が通用しなくなり、コミュニケーションや問題解決の壁は非常に高いものとなるでしょう。
それらを乗り越える過程やその先の結果によって、ものの考え方が豊かになることは、誰しもが経験できることではありません。
さまざまな障壁を乗り越える力や異なる価値観を持つステークホルダーとの関係を築く力など社会人に必要な力を養った経験として、留学経験をアピールできます。
文学部のPRポイント
文学部生の強みは、高い文章力とクリティカルシンキングを養っている点です。
文章力は、意図することを的確に文章で伝える能力なので、企業に対しESで効果的にアピールすることに長けていると言えます。
また、社会人になってからも文章を用いる場面は多々あるため、高い文章力を持つ人材は一定の評価を得ることができるでしょう。
また、文学部では、答えがひとつではない問いについてさまざまな思考をめぐらせ学びを得ています。これがクリティカルシンキングの考え方を養うことに繋がっています。
クリティカルシンキングとは、物事を多角的に検討し、論理的かつ客観的に理解する考え方です。
昨今の企業では、このクリティカルシンキングを採用し、企画立案や課題解決ひいては経営に関する意思決定などを行うことが多くなっています。
そのため、クリティカルシンキングを養っている人材は高く評価される傾向にあるのです。
学部にとらわれず前向きに就職活動をすすめよう!
「文系だと就職は難しい?」という不安や疑問は解消できましたか。
本記事を通して、文系、理系を問わず納得のいく就職活動が可能であることをお伝えしました。
本記事のポイントは、
- 文系と理系で就職率に大きな差はないこと
- 文系が就職しやすい業界、企業とは
- 文系の就職活動を成功させるために大切な3つのこと
です。
自信を持って就職活動をスタートするために、まずは丁寧な自己分析と企業研究からはじめましょう!