「面接終了“5秒前”に訪れた予想外のイベント発生。」

2025.11.14

「面接終了“5秒前”に訪れた予想外のイベント発生。」

面接が終わった――はずだった。

「では本日の面接は以上です。ありがとうございました」
面接官がそう言った瞬間、僕は胸の奥でそっと安堵の息をついた。

緊張しすぎて声が震えた質問もあったけれど、最低限、自分なりには戦えたと思っていた。
椅子から立ち上がり、出口に向かおうとした、そのときだ。

「……あっ、最後にひとつだけ確認してもいいですか?」

まさかの“延長戦”が突如始まった。

心の中で「今!?」と叫んだが、表情には出さない。出したら負けだ。

振り返ると、面接官はメモを見つめながら言った。
「あなたが“働く上で絶対に譲れない価値観”は何ですか?」
よりによって一番深いやつ。

これ、アイスブレイクのテンションじゃ答えられないやつだ。

「5秒前まで面接終わってたよね?」
そんなツッコミを飲み込みつつ、頭を高速回転させる。

“譲れない価値観”…
僕が本当に大事にしているものは何だったか。
給料でも、労働条件でもない。
考えるほどに、答えは自然と絞られていった。

「私が大切にしているのは“誠実さ”です。
 結果が出ない時でも、嘘をつかず、誰かのせいにせず、やるべきことを積み上げる姿勢を大事にしたいと思っています。」

言った瞬間、空気が少しだけ柔らかくなった。

面接官はふっと笑い、「なるほど、いいですね」とメモを閉じた。
本当に面接が終わったのは、そこからだった。

帰り道、僕は思う。
面接って試験や口述じゃなくて、
“その人の本音が出た瞬間”を見ているんだろう。

そしてときどき、それは面接終了の5秒前に訪れる。
予想外のイベントは心臓に悪いけれど、
ああいう瞬間があるからこそ、面接は面白いのかもしれない。
この投稿の著者
青木 駿
青木 駿
人材開発グループ
徳島県出身。慶應義塾大学経済学部卒。社会人3年目。
大学では行動経済学を専攻し、「人の意思決定は感情や環境に左右される」という視点から、人の動き方や選び方を研究していました。現在は株式会社温故知新の人事として、新卒採用プロジェクトリーダーとして企画から運用まで幅広く担当しています。インターンや説明会の設計、選考フローの改善、候補者とのコミュニケーション設計などを通して、「人の心を動かすしくみ」をつくることを意識しています!

趣味:サッカー観戦・国内旅行・個室サウナ・パン屋巡り
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